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Akeru's World of Paintings鳥図明児(ととあける)のイラストコレクション

2008 Akeru's Exhibition "Houses of Goa 2"
at Kala Academy Art Gallery, Campal, Panaji, Goa, India(April 2 - April 6, 2008)
2008鳥図明児(ととあける)作品展「ゴアの家々2」
(インド、ゴア州、パナジ、カラ
アカデミーアートギャラリーにて、2008年4月2日〜4月6日
カラ・アカデミー体験記 2008
PART 1 英語が下手なオバサンが、英語をちっともしゃべらないチュー学生とインドに行って、個展ができるのか?
カラ・アカデミー・ゴア (Kala Academy Goa) というのは、ゴアの首都パナジにある国立の芸術学校。「カラ」はヒンディーでアートの意味で、ゴアの芸術の中心地(たぶん)。
そこで絵の個展をしろと夫のジョンが言う。

そんなむちゃな!

じつを言うと、私は自分の絵が芸術だなんてゼンゼン思ってない。何しろ、ちゃんと絵を習ったことがないんだから。でも、
カラ(芸術)と名のついたところで個展をするとなれば、
自分は外国からはるばるやってきたアーチストなるぞ、と
カラ威張りしないといけないのではなかろうか?


インドでは肩で風を切って歩くくらいでちょうど良いのだし。

ともあれ、日取りは2008年4月2日から6日と決まり、春休みが始まるとすぐに、私は次男の海王とインドへ向かった。4月に入ると大学が始まるので、今回はジョンは来れないのだ。

あーあ、英語が下手なオバサンと英語をちっともしゃべらないチュー学生が行って、ほんとに個展ができるのかあ?????

とにかくカラ・アカデミーへ行ったのだ

パナジで個展をするのは初めてである。
ゴアに着くとすぐに、カラ・アカデミーのトップ、ファルデサイ博士に会いに行った。

カラ・アカデミーは著名なゴアの建築家、チャールズ・コレアが設計したモダンな建物で、迷路遊びのような面白い建物だ。壁にはだまし絵の窓や風景が描かれている。そしてただの扉の絵に見えるところが本当にホールの入り口だったりするのだ。

正門を入ると大きなゴムの木、ロビーの向こうに中庭、さらにマンドビ河沿いの木立が見える。河からの風がサァーっと通ってびっくりするほど涼しく、気温が35度とは思えないくらいだ。

ファルデサイ博士は知的な風貌の老学者。
ジョンの親戚に州議会議員がいるので、その議員を呼んで派手なオープニングをするのだろう、と博士は思っていたと思う。でもそれはしないと伝えた。

政治家のおかげで個展が成功したなんて言われたくないではないか。
やっぱりインドには数字に強い人がいるのだ

朝、ラジーシの白いミニバンが9時きっかりにカンサウリムの家の裏庭に入ってくる。ミニバンの前のドアには赤い文字でTOURIST VAN(観光ハイヤー)と書いてある。

ラジーシは日系の時計会社と観光ハイヤーの二足のわらじを履いている。日本人が時間にうるさいのを知っているのだろう。時間を守る。9時と言っておくと、きっちり9時に迎えにきてくれる。車が来るかどうか心配しなくてもよかったのは本当に助かった。
これはインドではレアなことだ。

今日はパナジの新聞社、雑誌社、テレビ局を回る。海王も一緒だ。

必ず訪ねなくてはならないのは、英字雑誌ゴア・トゥディの編集部だ。
編集長のヴィナヤクはジョンの友人で、ぜひ展覧会に招待したかったからだ。

彼はとてつもない頭脳の持ち主で、2000以上の電話番号を暗記している。

ゴア・トゥディにはゴアの有識者が記事を書き、毎月著名人のインタビューが載る。だからヴィナヤクが知らないゴアの有名人はいないと言ってよい。もちろん、その全員の電話番号、携帯番号を知っているのだ。例えば、何年も前にインタビューした建築家ジェラード・ダ.クーナ氏の連絡先が、すらすらと言えるのだ。
彼はメモも見ずに建築家の事務所に電話してくれた。

なんか、すっごく、インド!!

ゆえにSUDOKUなのだ

街の南側の丘の上にある公営TV局ドゥーダルシャンにも行った。

TV局に入るにはまず入局証をもらわなければならない。守衛詰所をのぞくと、年配の守衛さんが何かせっせと書いていた。何だろう、と見ると

それは地元の新聞のSUDOKUコーナーだった。

「あ、数独だ!!」
と、海王が日本語で言った。

守衛のおじさんはびっくり。


ゴアではどこへ行くにも海王を伴って行ったが、息子にしてみればさぞ退屈だったことだろう。退屈を紛らわすために、彼は日本から何冊も数独の本を持って行っていた。

海王が数独の本を見せるとおじさんは白い歯を見せて笑った。
海王も「すげー、インドの新聞に数独がある」とうれしそうだった。

言葉が通じない2人なのにね!

ケータイを携帯せぬもの人にあらず

暑い中、タイムズ・オブ・インディアの敏腕記者ピオは、カメラマンと一緒にカンサウリムの自宅に取材に来てくれた。

私が携帯電話を持っていないせいで、ピオに何度も家に電話をかけさせてしまい、おまけに家の電話は音声が悪くて、ずいぶんと迷惑をかけてしまった。でも少しも迷惑そうな顔をしないのだった。

ゴアのメディア関係者は、すぐに携帯ナンバーをきいてくる。私が持っていないと言うと、みんな決まって戸惑った表情をする。

先進国日本から来て、なぜケータイくらい持っておらぬ?

日本でも携帯持っていないんですけど。

ゴアでは携帯(こちらではモバイルという。通話とメールだけのシンプルなものが多い。)が、ものすごく普及している。なんと、うちのケアテイカーのシバだって持っているのだ。
女主人が持っていないのに雇われている方が持っているとは何事じゃ。べつにいいけど。

(ちなみに、半年後、日本からインド舞踊団がゴアに行ったが、いわゆる国際携帯はまったくつながらなかった。)

笑顔が見たいから

個展のお知らせのはがきは日本で印刷して持って行って知り合いや近所に配った。さらに、会う人会う人にはがきを渡した。
買い物に行った食料品店でも、薬局でも、コピー屋でも。新聞社のガードマン、カラ・アカデミーの掃除婦にだってあげた。
私くらいだよ、こんなばかなことするの。


はっきり言って、貧しい人が来てくれることは、ありえない。英語がわからない人もいれば、字が読めない人もいる。でも、貧しい人々がはがきを渡されたときに見せる、はにかんだ笑顔が好きだ。

一般に、貧しい人は他人から尊重されていない。命令され、怒鳴られ、ぞんざいに扱われている。はがき1枚と言えど、なにかもらうと、彼らは目をぱちくりさせ、それからにっこり笑う。

家に持ち帰って飾ってくれたらな、と思う。

「何が欲しいんだ」

息子は現地の人とあっという間にコミュニケートできたが、私はそうはいかなかった。

絵のモデルとなった家に感謝の気持ちを込めて、前回同様、絵のプリントを届けた。自宅から少し遠いところも多かったので、ラジーシの車で各家を回った。が、これが思ったより厄介だった。

こんな具合だ。
「あなたのために絵のプリントを持ってきました。For you. 」
「なんだって?いくらだ?
タダだっちゅーの。
「プレゼントです。絵の方はカラ・アカデミーに展示します。これ、案内のはがきです。どうぞ。」
「何が欲しいんだ?」

なんでそーなるの、FOR YOUって言ってるでしょ!


ある有名な家を訪ねたときは、ハナっから絵を売りつけにきたのだと思い込まれ、どう説明してもわかってもらえなかった。過去に外国人が家の写真やスケッチを売りつけにきて困ったことがあるのだという。だからって・・・

とうとう私は車の中で泣いてしまった。

ラジーシは言った。
「どうしてこんなことをしなければならないんだ?やめよう。感謝している人なんか一人もいないじゃないか。」

ラジーシには全くバカげたことに見えたことだろう。「何が欲しいんだ」と言われるために、わざわざ絵をスキャンしてプリントアウトし、安くない観光ハイヤー料金を払うなんて!
熱帯ではゆっくり歩くのだ

4月1日。ギャラリーに絵を搬入。

カラ・アカデミー・アート・ギャラリーは、正面のゴムの木からロビーに向かって右手にある。左手には警備員詰所がある。

こちらでは鍵を渡されることはない。警備員が鍵の開け閉めをする。
警備員が一人、ギャラリーの鍵を持って出てきた。
私たちは荷物を持ってせかせかとギャラリーに向かう・・・が。
ふと振り返ると、

警備員はゆっくり歩いている。
あきれるほどゆっくりと、だ。


時間の流れ方が違うのではないか、と疑う。

ギャラリーはロビーに面した部分が全面ガラス張りでモダンだ。ロビーから中が丸見えなので、まだ準備中なのに、絵を見に入ってくる人がいる。
さすがカラ・アカデミーだ。
海王と2人で絵をフックに描けると、準備はすぐ終わった。

中庭に面したカフェテリアで昼食をとる。キッチンだけが建物の中にあり、カウンターもテーブルも外にある。中庭の中央には大きなブーゲンビリアの木がある。涼しい。オムレツやサモサが食べられる。持参した弁当を食べている教授もいる。

海王はカンサウリムの小さな食品店で買ってきたマンゴージュースを飲んだ。私はニンブパニ(塩と砂糖が入ったレモンジュース)を飲んだ。
汗をかいた後のニンブパニは最高だ!


PART 2 につづく

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